RAW現像はご存知の通り、重い処理で、マシンパワーを必要とする作業になります。
最近、RAW現像が遅くなったと感じられる、あるいは、現像処理が失敗した方はいらっしゃいませんか?
確かに、以前よりもカメラの画素数も増えたし、その他のデータやアプリも増えたので、遅くなっても仕方ないと感じられているかもしれません。
でもちょっと待ってください。
冷静に考えると、何か明らかに遅くなったような気がしませんか?
確かに人間は適応性に優れた面があります。良く言う、”慣れ”というものですね。
ある面素晴らしいのですが、悪い事でも慣れてしまう。
実は… ある環境では、処理が遅くなっています。
そして、それを解決するにはどうしたら良いのか。
その解決方法を書いていきたいと思います。
ちなみに、現役フォトグラファー(世にいうカメラマン)です。
写真撮影・画像処理を生業としています。
過去には、回路設計者、更にシステム管理者という経歴があります。
その両方を経験しているという立場で、RAW現像・画像処理に適したパソコン正確には、最も重要なパーツであるCPUについて書いてみます。
切実な問題とまでいかなくても何か感じている方は、ぜひご覧ください。
私も何かお手伝いができる事があればさせて頂きたいと考えています。
RAW現像・画像処理用のCPU
RAW現像・画像処理用のパソコン、特にCPUはどんなものが良いのでしょうか。
単なる理屈ではなく、実際に使ってみて分かった事をもとに書いています。
RAW現像・画像処理用はCPUの性能に依存します
このような事はありませんか?
Lightroomで大量のRAW現像をしたり、Photoshopで大量のTIFFファイルをJPEGに変換する時、今までより遅くなったなという感覚。
これらのバッチ処理をする場合、明らかに時間が掛かると感じる事があります。
ちなみに私は痛切に感じていました。
仕事でしていますので、余計な時間が掛かることは避けたいものです。
Photoshopでフィルターを掛けると、やたらと時間が掛かる。
こういう経験をされた方はいらっしゃるのではないでしょうか。
自分のPCは、Core i7だから、遅いハズはない。
気のせいだろ、とか。
いろんなアプリ入れてるから重くなったからだ、とか。
そのままになってしまう事も多いと思います。
IntelのCPUが最近遅い?
実は深刻な問題があります。
現在、Core iシリーズは現在第10世代となっていますが、まず、元々の設計が古いです。
技術的な事はここでは割愛しますが、設計が古い事により、特にセキュリティ上の問題が次々と発覚しています。
こちらのGIGAZINEの記事では、IntelのCPUにパッチを当てた場合、パフォーマンスの低下を検証したデータがあります。
これはかなり深刻な状態です。
やはり、気のせいではありませんでした。
最近遅いと感じるのは、実際に、かなり遅くなっていたのです。
15%~16%とありますが、深刻なバグがいくつも見つかり、その度にパッチ(修正プログラム)が適用されます。
これは回路設計レベルの問題なので、完全には改善されません。
そして、これらの問題がいくつもあり、それが積み重なりパフォーマンスの低下につながります。
体感的にはもっともっと低下していると感じます。
第9世代の時には、ハイパースレッディングにも脆弱性があり、第9世代のCore i7、Core i5、Core i3は無効にされました。
実際に起きているIntelのCPUでの障害
具体的には、作業中に以下のような現象が起きていました。
Lightroomで書き出しするだけで、マウスカーソルがカクカクして動かなくなる。
レーティング(☆印)を付けるだけで、画面が真っ黒になる。
画像ファイルを選ぶだけで、Lightroomが異常終了する。
Photoshopで、スマートシャープの処理が、1枚あたり3分以上かかる。
また、書き出しに失敗して、0(ゼロ)バイトのファイルが出来ている事があります。
このような事が作業している間に何回も発生しました。
これらの作業はすべて仕事でしているので、非常に困っていました。
このような事は、実際に仕事で使ったり、ハイアマチュアの方が作業をしてわかる事だと思います。
古いものですが、Core i7 3770K、RAM 32GB、OSとアプリはSSD(SATA)にインストールして使っていました。
CPUクーラーも大きなものを付けており、冷却にも問題ありません。
このような環境でした。
既にRyzen 9 3900Xの環境に移行したので、過去形になっています
最初はLightroomのバグかと思っていたのですが、検証の結果、原因はCPUでした。
このような検証は、仕事で過去に何十回としていますので間違いありません。
IntelのCPUがダメならどうしたら良いのか?
IntelのCPUも 軽い事務処理のような作業なら使えます。
しかし、RAW現像のようなクリエイティブ系は難しいですね。
大量のデータを一気に扱うような処理は苦手なようです。
この辺りは実際に使ってみないとわかりません。
Intelに代わるCPUはあるのか?
答えはあります。
確かにあります。ご存知の方はご存知でしょう。
AMDのRyzen(ライゼン)です。
速いCPUはあります。気のせいとかブランドイメージではなくて。
今、このCPUの世界に大きな変革が起きています。
それが、AMDのRyzen 3000シリーズ、第三世代とも言われているCPUです。
AMD Ryzen 3000シリーズ 第三世代のCPU
非常に優秀でクリエイティブ関係の作業に適しています。
マルチスレッドの処理はIntelを圧倒します。
これは、実際に使っている方、データがすべて証明しています。
デスクトップ用のCPUとして以下のモデルがリリースされています
- Ryzen 9 3950X
- Ryzen 7 3900X
- Ryzen 7 3900X
- Ryzen 7 3800X
- Ryzen 7 3700X
- Ryzen 5 3600X
- Ryzen 5 3600
- Ryzen 5 3500
- Ryzen 3 3300X
- Ryzen 3 3100
詳しい事は割愛しますが、いずれも非常に優秀なCPUばかりです。
そんなの、知らないよ。ごもっともです。
こう思う方が多いのではないでしょうか。
Core i シリーズのCPUは、多くの方がその名前をご存知ですね。
“Intel 入っている”という、おやじギャグのようなキャッチフレーズが有名ですね。
もはや定番で、Core i7 、Core i5、Core i3というと、もう定食か何かの松竹梅のようなランクがあって、Core i7なら、速いとか、いやいやCore i9でしょ、という方も多い筈です。
そのメーカーであるIntelも有名ですので、あまりPCに触れない方は、AMD?と思われることも多いでしょう。
知名度も全く違いますが、あまり知られていない所で使われていたりします。
例えば、SONYのPS5、マイクロソフトのXBOXも中のチップはAMDで、その高性能ぶりは有名ですね。
知る人ぞ知るという感じですね。
なので、PCに詳しい方たちの間では、AMDのCPUについて、かなり話題になっています。
パーツ単体でのシェアは、AMD が Intelを越えています。
少し前までは、IntelのCore i7もコア数が4が最高でした。
それ以上は、20万円以上でないと、メニーコアの恩恵は享受できない。
それが現実でした。
IntelのCPUは、クリエイティブ系の処理には向かない
実際、私もかなり重い処理をしています。
美術品の撮影が多いのですが、美術館の展示室において、暗い空間に明るい照明がスポットのように照らされている場合。
想像して頂きたいのですが、一部はとても明るく、照明が当たっていない所はとても暗い。
やはり、HDRを使うしかありませんね。
今は、LightroomでHDRを生成できますが、非常に大きなファイルなります。
Adobeが提唱する、DNGの形式ですが、通常のEOS 5Ds 5,000万画素のRAWファイルは60MBほどですが、HDRでは200MB以上になります。
また、それらをまとめて、横長、縦長のパノラマに仕上げると…..
HDRパノラマでは、350MBとか、大きいものでは1GBを超える事もあります。
このような巨大なDNGファイルをLightroomで展開すると、とても遅くなります。
Lightroom のメモリ使用量も9GBとかになり、とても遅いです。
しかし、問題はそれだけでは済みません。
IntelのCore i7では、なんと書き出しがまともに出来ず、ずいぶんと困った事がありました。
ついでによくブラックアウトしたり、Lightroomが突然クラッシュしたりと、中々見た事がない現象を経験出来ました。
このように大変困っている状態でしたが、新たな動きがありました。
AMD Ryzen 第一世代の登場
2017年、AMDが第一世代のRyzen 7 1000シリーズを発売、Core i7クラスになります。
8コアのCPUが現実的な価格で使えるようになりました。
その結果、IntelもCore i7にも、ようやく8コアのモデルが登場しました。
AMD Ryzen 第二世代の登場 更に改良される
2018年、世代毎に、弱点を克服し、大幅な性能の向上がありました。
コストパフォーマンスで、Intelを圧倒しました。
マルチコアの性能では、Intelの格上のCPUも超えるものになりました。
Ryzen 3000シリーズのRAW現像の性能
2019年、第3世代、Ryzen 3000シリーズの登場です。
ついに若干遅れていた、シングルの処理もIntelを超えました。
更に、元から得意だった、マルチスレッドの処理は、Intelを遥かに超えるものとなりました。
これは、クリエイティブ系の処理では大きな恩恵を得られます。
ニコン D810 3,600万画素の60枚のRAWファイルを「DxO PhotoLab 2」で現像するというテストの結果は?
Ryzen 7 3700XとRyzen 9 3900Xを用意して、JPEGに書き出すというものです。
所要時間を競合のIntel Core i9 9900Kと比べてみると、結果はこうなりました。
これは、60枚現像の所要時間になります。
Core i9 9900K | 1,457秒 | |
Ryzen 7 3700X | 1,324秒 | 133秒速い |
Ryzen 9 3900X | 1,033秒 | 424秒速い |
こちらは、1枚当たりの所要時間です。
Core i9 9900K | 24.28秒 | |
Ryzen 7 3700X | 22.07秒 | 2.21秒速い |
Ryzen 9 3900X | 17.22秒 | 7.06秒速い |
このような結果となりました。この差、凄くないですか。
仕事や大量に撮影する方ならこの差は大きいと思います。
1,000枚、2,000枚位普通に撮りますね。
1,000枚なら、Ryzen 9 3900XはCore i9 9900Kよりも、7,000秒速いのです。
という事は、117分速い、つまり2時間早いという事です。
クライアントにその日に画像を届けられるか、翌日になるか。
の違いにもなります。
その差は最終的に…
特に、フリーランスのフォトグラファーの場合、次に仕事が頂けるか、それともスルーされるかの違いになるのではないでしょうか。
それでも、今まで通りIntelを選ぶ理由はあるのでしょうか。
また、Ryzen 9 3900Xは実際に組み立てて、Cinebench R20を実行させたところマルチスレッドのスコアは、7130となりました。
ネット上にあるCore i9 9900Kの同ベンチマークのスコアは4,800位です。
なので、概ねCinebenchのマルチスレッドのスコアの差がRAW現像のスピードに比例するようです。
また、Ryzen 7 3700Xは消費電力の少なさも大きな特徴です。
このテストでも、Ryzen 7 3700XはCore i9 9900Kよりも、RAW現像を早く済ませています。
性能が良いうえに、消費電力が半分くいとなれば、お家でも安心して使えますね。
これは、一つのベンチマークですが、他のテストからみても、Ryzen 3000シリーズはマルチメディア系の処理を得意としているのは明らかです。
RAW現像のような処理は、データも大きく、複雑な処理が必要ですので、CPUの性能が大きく影響します。
CINEBENCH R15という、3Dの画像を描画して、その速さを競うベンチマークでは、Core i9 9900Kに対して、Ryzen 9 3900Xは、約58%もの差をつけています。
RAW現像・画像処理用のパソコンのおすすめ のまとめ
大量のRAW現像、大量のバッチ処理、何枚ものレイヤーを重ねたり、パノラマ画像を作成したりと、処理も重くなっています。
また、カメラの画素数も増えて、3,000万画素レベルも普通ですね。
高画素化は止まりません。
このような傾向は増々、強くなると思います。
こうなると、快適な処理をするためにも、高性能なPC=速いCPUが必要となってきます。
RAW現像には、高性能なCPUが必要です。
Lightroomの書き出しをするだけでブラックアウトする、ファイルを選択するだけで落ちるようなCPUは論外です。
「時は金なり」と言います。
よりクリエイティブな事に時間を使いたいものです。
Ryzen 9 3900Xで自作し、今は仕事でバリバリ使っています。
机上の空論でもありません。
根拠もなく○○の第10世代が”一択”という話でもありません。
自作はちょっと難しそうと思われるのであれば、BTOで組み立ててくれるお店もあります。
個人的には大手メーカーよりも、ショップ系が良いと感じます。
新しいPCを導入する予定があれば
実質的なテストも心にとめて検討して頂ければと思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。m(_ _)m